【地域貢献活動】テーマ「日本語の教科書で防災講座」
こんにちは。MIKIです。
先日、長野県上田市の生活日本語支援グループのゆうあいまるこさんで、ボランティアスタッフさんとキーパーソンさん(注)のためのオンライン講座を担当させていただきました。
テーマは「日本語の教科書で防災講座」です。こちらは「災害時における情報伝達を地域社会で考えるシリーズ」の講座です。
こちらの講座は代表者の方が、依頼時に「防災について、外国籍住民に伝えたい。そして、日本人としてボランティアスタッフも外国籍住民の考えを知り、一緒に防災について考えたい」という想いを話されていました。
この要望を組み込んだ講座を企画し、開催いたしましたので、こちらにレポートをいたします。
注釈「キーパーソン」・・・ここでは、日本語学習をしながら、それぞれのコミュニティへ情報を伝達したり、コミュニティ内をサポートする立場にある人。またはそれを目指す人。基本的には日本語学習者。
講座の流れ
① アイスブレイク
② 日本語の教科書
「いろどり」の紹介
③ グループワーク:どうやって「防災」を伝える?
④ メインセッション:アイディアの共有
⑤ 宣言
⑥ 質疑応答とまとめ
それでは講座のメインをレポートしていきます。
日本語の教科書「いろどり」の紹介
国際交流基金からリリースされている日本語コースブック「いろどり」をご紹介いたしました。
ここで「いろどり」を紹介した理由は、「総合的な国際交流を実施している専門機関が作成した教科書であり、信用性が高いこと」と「Web上で無料公開されていて、使用しやすいこと」でした。
ここでは、Web上で公開されている教材を紹介していきました。公開当初より様々な教材が公開されています。
今回「日本語の教科書で防災」では、初級2 第16課を使用しました。
今回、使用する教材を中心に一部を紹介いたします。
グループワーク:どうやって「防災」を伝える?
一通り、日本語の教材に目を通してたら、次にグループになり、それぞれの周りの人にどうやって「防災」について伝えるか、を考えてもらいました。
例えば、ボランティアスタッフの場合だったら、「参加しているボランティアグループにいる学習者にどうやって「防災」を伝えるか」、キーパーソンだったら、「自分達のコミュニティにどのように「防災」について伝えるか」を考えてもらいました。
ブレイクアウトルームに分かれ、Googleのスライドを使い、共同編集しながらグループワークを進めました。
こちらで設けたルールは二つ。
① 「いろどり」を使ってもいいし、使わなくてもいい。
② できるだけ、多くのアイディアを出すこと。
それぞれのブレイクアウトルームでは、今までの活動を通して考えてきたこと、そして伝えていきたいことを書き出していました。
共同編集に戸惑いながらも、たくさん書き込まれたスライドが完成しました。
メインセッション「アイディアの共有」
グループワークを終え、メインセッションでは各グループのアイディアを共有する時間を設けました。
それぞれのグループでのアイディアに「これ、すぐにできそうだね」「なるほどね」と言った声が聞こえてきました。
ここで、アイディアを一部ご紹介いたします。
- 19課を参考に持ち出し袋を用意して、みんな(コミュニティ)に見せる。
- 消化器を使う(地域の防災訓練に参加する)。
- 各国の炊き出しメニューを考える。
- 防災マップを紹介して、確認する。
- どんな時に避難するか、考える。
- 教室で防災のことを話したら、家庭へ帰っても防災のことを話してもらう。
- 「災害」や「避難」について知りたいことをインタビューする。
宣言
アイディアが出たところで、次に宣言をしてもらいました。
余談ですが、こうした講座の後は、「いいワークショップだったな」「勉強になった」だけでは、ワークショップのファシリテーターは満足できません。
講座後に行動に移していくことで、こうしたワークショップの意義があると考えています。
さて、今回は参加者一人ひとりに出されたアイディアの中から、1ヶ月以内に確実に行動に移せることを1つ選んでもらい、宣言してもらいました。
みなさん、すぐに決まったようで、一人ずつ、みんなの前で宣言してもらいました。
次回(あるならば)、宣言の実践報告もしていただく約束もさせていただきました。
実践報告がとても楽しみです。
今回の「日本語の教科書で防災講座」のレポートは以上です。
ファシリテーターのひとりごと
今回の講座の中心は「防災」についてどう伝えるかということでした。
地域日本語教室の現場では「防災」は頻繁に扱われるテーマの一つであり、学習者も関心を寄せるところです。
しかし、長年、地域の日本語教室に関わっていると、国によって防災意識の差や年代によっての防災意識の差が大きいことに気付かされます。
国によっては、「自分の命より家族の命の安否が大事」と家族が帰るまで、または家族の安否が取れるまで避難しないという人がいます。そう考える方に「その考えは間違えです」というのは酷で、理解される前に信頼関係が崩れてしまいます。
そして、世代によっての意識の差についてですが、日本の教育機関で育っている子どもたちは防災に関する知識が親世代(注)より、あります。こうした子どもたちにも防災についての情報伝達を担えるのではないかと考えています。
さて、それにしても、今回出たアイディアがとても素晴らしいなと思って眺めていました。
日本語教師がこうした講座を受け持つとなると、なかなか「日本語の授業」から抜け出せません。それが今回は、ボランティアスタッフ、キーパーソンの方々はこうした日本語の教科書は脇役と捉え、地域の日本語教室の実情や学習者に合ったアイディアを出し合い、学習者と支援者の「わたしたち」を中心に話し合いが進んでいました。
地域の日本語教室の真摯な姿勢が垣間見れた、とても貴重な時間でした。
ありがとうございました。
注釈「親世代」・・・この場合、成人してから来日した親世代を指します。今は、日本で生まれ育った海外ルーツの若者も親世代になりつつあります。