日本語教室の高齢化問題。うちのスタッフ紹介します。
みなさん、こんにちは。
長野県で地域日本語教育コーディネーターをしているMIKIです。
先日、こんなことをつぶやきました。
私の携わっているボラ教室は平均年齢70歳(推定)のおじい、おばあがスタッフです。そんなみんなはZoomを使えるようになりたいと一所懸命習得してくれました。活動も学習者の話に合わせて、話題を振れるできる人たちです。この活動のためにスマホにした人も。次回は辞書アプリを教えてあげる予定です
— MIKI (@okmymiki) January 25, 2021
このことについて、ちょっと話してみたいと思います。
地域のボランティア教室は高齢化が課題
地域の日本語教育、ことにボランティア教室の課題として挙げられるのが「高齢化」。私が携わっている教室も高齢化が進んでおります。
この点で様々な議論(若い人が育たないのなんで問題や日本語教育は専門家に任せるべき論)があるのですが、今日はそこを話したいのではないので、すっ飛ばします。
世間では高齢と言われるシニア世代。そんな方々が楽しそうに活動をしているので、今日はその紹介をしたいと思います。
中学の英語の先生、中国語で教えたい!
お一人、ご紹介します。
前職は中学校の英語の先生です。お名前はハタさん(仮名)。
退職を機に中国語を勉強し始めたので、その中国語を生かしたいとのことで、ボランティア教室に参加されました。毎週、参加され、中国出身の研修生や日本人の配偶者の方と一緒に勉強をしていました。
覚えたての中国語を使いながらの日本語レッスン。中国からの学習者に様子を尋ねると「大丈夫」と苦笑しながらも勉強を続けていました。お世辞にも良いと思えるものではありませんでしたが、様子を見ることにしました。
教室が終わり、スタッフ同士の報告後はすぐに帰宅されてしまい、ゆっくりと話をすることもできませんでした。心の中では「学校の先生を経験されていると、自分の教え方のスタイルが固まってしまっていて、なかなか改善してもらえないな」という思いがありました。今後、どうしようかとモヤモヤしていました。
中国人研修生に囲まれてる!!
そんなこんなで月日が過ぎ、秋になり街の国際交流イベントに参加することになりました。私たちのグループは恒例のワールドキッチン的屋台を出店することになりました。当日は準備や調理で朝早くに集合することになっていました。
私も慌ただしく動き回っていると、会場の玄関の喫煙所付近で中国人研修生が固まってタバコを吸っています。10人ほどいるでしょうか。大勢でタバコを吸う集団ってなかなかの迫力です。よく見ると、円陣になっているので、「中心は誰?」と恐る恐る覗き込んでみると、あのハタさん!私は「ハ、ハタさんが囲まれてる!!助けなきゃ!」。高齢のハタさんがタバコをふかしている集団に囲まれているのは一大事です!
ん?
よーーーく見ると、ハタさん満面の笑み。そして、ご自身もタバコふかしてるーーーー!
覚えたての中国語を使って、楽しそうに話していたのです。そして、それを聞く中国からの研修生も楽しそうにハタさんを見つめます。家族から離れて暮らす若い研修生には高齢のハタさんとの会話は癒されたのではないかなと思います。
こだわりは強みになる
その後もハタさんは活動に参加し続け、中学の英語教師だったことを生かし、呼び寄せの中国出身の中学生や高校生の日本語指導も力を入れてくださっていました。ハタさんとともに学んだ子どもたちはそれぞれ希望する進路に進み、今は誰でも知るグローバル企業に勤めています。
中国にこだわっていたこと、そして進学にこだわっていたこと。これはハタさんのアイデンティティであり、強みでもありました。そして、私たちボランティア教室のスタッフとしても大切な人材でした。
ご家族の都合で参加できなくなってしまった頃、ご家族が「父は毎週末、楽しみにしていました。その楽しみを取ってしまうのは本当につらい。」とおっしゃっていました。ハタさんが参加できなくなっても中国の学習者たちからは「ハタさん、元気かなぁ」という声がたまに聞こえてくるほど、私たちにとっても大きな存在でした。ハタさんの参加がないまま、月日は経ち、ご家族からご連絡がありました。「最期まで教室への参加を楽しみにしていました。」。
地域の日本語教育に必要なもの
冒頭にも書いたように「地域の日本語教育に専門家が必要だ」という声もあり、私も賛同することです。
このハタさんとの出会いと別れを通して、それだけではないことも実感しています。この思い出話を読んでくださりありがとうございます。お一人お一人が何が必要か、考えてくださるきっかけになれば、うれしいです。