にほんごの先生勉強会で考えた「行動中心アプローチ」の授業案が濃い!
みなさん、こんにちは。
MIKIです。
今日は長野市の日本語教師の皆さんが集まっての勉強会を開催しました。
ファシリテーターは私、MIKIが行いました。
テーマは
「日本語の授業を作ってみよう〜地域の日本語教室で教える〜」
有資格の日本語教師の方々と一緒に、地域で教える「日本語」について考え、授業案も考えていただきました。
そこで見えた文型積み上げ式の呪縛と行動中心アプローチでの授業案がとても濃いものができたので、今日はこの2点をご紹介します。
それでは、早速いってみよう!
日本語学校と地域の日本語教室の違いは何だろう?
今日、集まった先生方は皆、日本語学校で教えた経験のある方々ばかり。
こうした先生方が地域の日本語教育に目を向けていただけると、とても心強い。
まずは、先生方に日本語学校と地域の日本語学校の違いについて、出し合っていただきました。
漠然と抱いていた違いを言語化してみることで、明確に違いを捉えることができた様子です。
特に注視していただきたかったのは、初級にかかると言われている300時間という数字。
日本語学校と地域で学ぶ日本語教室ではこの数字の期間の差が大きい。
年単位でかかってしまう地域の日本語教室では「勉強しても勉強しても何だか、身につかない」→挫折となってしまうことがあります。
そこで、地域での日本語教育には「行動中心アプローチ」が適切です、というお話をさせていただきました。
(「行動中心アプローチ」に関しては、ここでは割愛させていただきます。)
課題を通して見えてきた文型積み上げ式の呪縛
モデル会話と教科書(『まるごと初級1りかい』)1課分を資料として提示し、この勉強会の前に次のような課題を出しました。
[box03 title=”課題”]モデル会話を参考に地域での日本語教室の1時間の授業の流れを考えてください。[/box03]
みなさん、どんな授業案を持ってきてくださるか、ワクワクして待ちました。
一人一人、細かい活動はアイディアを練ってきてくださっていましたが、流れとしては文型積み上げ式の授業の流れでした。
どちらかというと、教師がよくしゃべるタイプですね。
ご自身の授業案は文型積み上げ式か、行動中心アプローチ寄りか、考えてもらいました。
[chat face=”man1″ name=”” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=””]地域の日本語教室ということで、会話中心にしてみたけど、見直してみたら、文型積み上げだった![/chat]
という声が多かったです。
日本語学校での経験しかなかったり、文型積み上げ式の教え方しか知らない先生方が、地域の日本語教室で教えることになると、もしかしたら、効果が出にくい教え方をしてしまうことがあるかもしれません。
そして、生まれた濃い授業案!
そうはいっても、有資格の先生方です。
私が行動中心アプローチのメリットを少しお話ししただけで、要領を得、とても濃い、濃い行動中心アプローチの授業案を考えてくださいました。
ひとつ、ひとつ見ていきましょう。
目標となる行動
「駅ビルMIDORIのいろは堂でナスのおやきを買う」
行動中心アプローチでは行動を注目して、授業をデザインしていきますが、この目標となる行動を考える際も最初は「買い物をする」とだけにしていました。
そこで、「もっと生き生きとした、ワクワクする行動にしましょう」と提案し、具体的なお店の名前、商品名にし、すぐ行動に移せるようなことを目標行動にするようにアドバイスしました。
これはとても重要なことだと考えています。
今すぐにでも動き出せる行動、血が通い、息遣いを感じる行動が良いと個人的には思います。
次は、Can-doについて考えていきます。
Can-do
「知らないおやきについて、店員さんに尋ねることができる」
いくつかの行動リストの中から、can-doはこちらに決定。
そして、文型と語彙。
レベルはA1レベル(CEFR)のものを。
必要となる文型と語彙
「これは何ですか」
「これは( )です」
語彙
・野菜
・かぼちゃ
・切干大根
・野沢菜
・そら豆
・あんこ
・ナス
語彙はおやきの具が次から次へと出てきて、必死に止めたくらいでした。
この辺りまで来ると、だいぶ授業がデザインできてきた雰囲気で、先生方もきっと頭の中はワクワクしているはず。
まだまだ、さらに、評価へと続きます。
評価
ロールプレイ
教師が店員となり、学習者が客でロールプレイを行う。
さらに、can-doができていたかの評価として、「ロールプレイ」や「実際にお店へ行って買う」というアイディアが出ました。
ロールプレイでは「店員役も客役も学習者がやる」というアイディアも出ましたが、今回のCan-doには沿っていないことを指摘しました。
もしCan-doが「おやき店でアルバイトをする」だったら、その評価もOKでしょう。
行動中心アプローチの場合、目標となる行動ができるかどうかという点に重点を置いていることを留意することで授業の際、学習者に余計な負担をかけなくなるでしょう。
最後に
こうしてできあがった授業案。
何よりも先生方、みなさんが楽しそうに授業をデザインしていたのが、とても印象的でした。
地元の特産品を取り入れ、そしてファシリテーターから「もっと楽しく」と要求され、深く作り込んだある意味「濃い」授業案。
うん、やはり、行動中心アプローチは授業を楽しくさせてくれるなと確信しました。
あとはおやきの写真や実物などを用意するのは、それぞれの先生方の腕次第でしょう。
有資格の先生方でもアプローチの仕方が複数あることを知っておくことだけでも、これからの日本語教育のキャリアに幅を持たせることができると思っています。
市販の教科書にはない話題で授業を作れるスキルを身につけた先生方は、強く、しなやかに授業をデザインしていってくれると確信しています。
どなたかの参考になれば、幸いです。
ちなみに、いろは堂のおやきは、私もお気に入りです。